次の世代へ繋げていきたい職人の技と本質のあるスタイル。(後編)

ブランドとゆかりのある方々をお招きし、出会いのエピソードや思い出深いアイテムなどについて語っていただく連載「LIFE NOTES」。今回は145年という長い歴史を持つ老舗「開化堂」の6代目として、伝統と変革のバランスを保ちつつグローバルな視野で活躍する茶筒職人の八木隆裕さんと、奥様である光恵さんをゲストにお迎えしてお送りします。同時公開される音声コンテンツで、インタビュー時の生の声も併せてお楽しみください。

お二人が本日お召しになっている洋服もマーガレット・ハウエルのものということですが、どういったところがお気に入りですか。

隆裕さん いろいろなアイテムを持っていますが僕はシャツが一番のお気に入りですね。仕事柄、肩や肘など腕をよく動かすのですが、その時にシャツを着ていることを忘れるくらいに着心地がよくて、気にならないんです。そこがやっぱり他のシャツとは違います。それでいて洗練された高級感というのも持ち合わせているので、急なお客さんが来た時でもサッと表に出られる。なので、仕事している時にもよく着ます。今着ているカーディガンもお気に入りです。これも仕事中によく着るのですが、作業していてちょっと暑くなったときにも熱気を逃してくれて、すごく便利です。

光恵さん 私が着ているこのニットは、神南のお店で購入しました。カシミヤなので肌触りがとても良いんです。グリーンのような柔らかい色味で、まるで自然の中にいるみたいに気持ちが落ち着きます。パンツはMHL.のものです。私も工房にいたり、事務所に戻ったりとバタバタしていることが多いのですが、このパンツはとても動きやすいです。それでいてお客様がいらしたときにもキチンと見えるというのが気に入っています。

今着ているもの以外でも、マーガレット・ハウエルのお気に入りアイテムがあればお話をお聞かせいただけますか。

光恵さん ロンドンのお土産としてもらったニットもお気に入り。子供の行事などでよく着ていたものなのですが、その行事と照らし合わせてどれくらい前から着ていたかなと考えたら、もう7年以上前で驚きました。本当に長く使えるものばかりですよね。後ろのボタンも可愛いのですが、袖が少し短いので、下に着るものによって印象が変わるところもポイントです。

隆裕さん 一回着てみるとマーガレット・ハウエルの良さがわかります。気軽に手を出しづらい価格のものもあるかとは思いますが、一度その着心地を味わったら、もう手放せないアイテムばかり。値段以上のクオリティがあることをわかっているから、最近はもう気に入った服があれば買うようになりました。

アーコールの家具も、マーガレット・ハウエルで購入されたことがおありだとか。

隆裕さん 僕が実演販売で参加していたイベントで出合いました。アーコールのサイドテーブルが大中小と並んでいる様子がすごく可愛いらしくて、自宅用に購入しました。

光恵さん ちょうど家を建てたばかりで、リビングに置くサイドテーブルのようなものを探していたときだったんです。今では3人の子供たちが勉強机として思い思いに使っています。

隆裕さん クワガタの落書きをしたりしてね。実際に使ってみたら、やっぱりアーコールの家具って気持ち良くて、それでいてなんか楽しいんですよね。カチッとしていながら遊び心がある。とても気に入ったので自然な流れでカフェでも置くようになりました。

それと本日花瓶もお持ちいただきましたね?

隆裕さん ロンドンに一昨年の夏に行った時にマーガレットさんのショップで、パッと目についたのがあの花瓶で。ヴィンテージだと伺ったのですが、これいいよねって2人で言って、即決でした。家の階段のところにずっと飾ってます。そこは、出張やみんなで旅に行ったときのものがたくさん並んでいるんです。

職人としてものづくりをされている隆裕さんが、つい欲しくなるような刺激のあるアイテムとはどういうものなのでしょうか。

隆裕さん 軸がちゃんとあるけれど、そこにちょっとした新しいものが加わっていて、そのバランスがストンと落ちているものには惹かれます。今の流行を追っただけではないけれど、今見たら新鮮で楽しいもの。それは服でもプロダクトでも一緒ですね。100 年以上前から同じものを作っているのが開化堂。僕もずっとそれを作り続けているけど、やっぱり今の人に合わせないといけないところもあると思うんです。何を足すべきか、ということを普段からたくさん考えているので、その意識を感じる製品には自然と手が伸びてしまいます。

働き方も変わりつつある今、お二人の普段の生活で変わったことは何かありますか。

光恵さん 時間がゆっくり過ぎていくようになりましたね。朝仕事に行く前でもちょっと紅茶を入れる時間やお茶を飲む時間が増えたかな。今まで欲しかったけど、目の前のことに忙し過ぎて作ることのできなかった時間ができました。

隆裕さん 確かにお茶を飲む時間は増えたよね。職場の会議でも、僕がみんなにお茶を入れるようになったし、ちょっと一歩止まるということを考えるようになった気がします。今までは次のことをどんどんやっていくことが正義だったんですけど、一旦落ち着いて考えてやっても大丈夫だと思えるようになったのは大きい変化かもしれないですね。自分にとって心地いいことについて考える、いいきっかけになったと思います。

最後に、マーガレット・ハウエルの魅力について一言お願いします。

光恵さん マーガレット・ハウエルさんの服を着ると、自分が自分でいられるんです。どこにいても、安心して真ん中に立つことができる、そんな服を作ってくれるブランドだと思います。

隆裕さん マーガレット・ハウエルは「もしかしたらこの服を、いずれは息子が着ることになるかもしれない」ということを思えるような服を作ってくださるブランド。受け継がれていくという点ではまさに開化堂とも似ていると思っているのですが、そんな風にお互いのことを考えられるところが何より魅力なんだと思います。

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PROFILE

八木隆裕、光恵・やぎたかひろ、みつえ

隆裕さんは1974年、京都府生まれ。京都産業大学を卒業後、3年間の会社員生活を経て、2000年に「開化堂」の家業を継ぐべく、父・八木聖二の下で修業をはじめる。新規の商材開発に加え海外向けの宣伝販売活動を積極的に行う一方で、京都の若手職人とともに「GO ON」プロジェクトにも参加。光恵さんは、結婚後「開化堂」ならびに隆裕さんの仕事を影で支え続けている。

PHOTO: TETSUYA ITO
EDIT: YU_KA MATSUMOTO
TEXT: RIO HIRAI
SOUND ENGINEER: SHINSUKE YAMAMOTO