イギリスのヘリテージ

「バブアーとマーガレット・ハウエルは共に、クオリティに妥協をゆるさないこだわりを持っています。そして服というものが実用的で長く大事に着てもらえるものだと信じていること、伝統的なものづくりのスキルをリスペクトしているところも共通しています」

─ マーガレット・ハウエル

写真家・平野太呂さんがゲストとトークを繰り広げる連載「LIFE NOTES」。ゲストと共にマーガレット・ハウエルにまつわるテーマについて考えます。第 10 回目のテーマは「ヘリテージ」。私物でも「バブアー」のアイテムを愛用しているという俳優の柄本佑さんが、「ヘリテージ」に感じる魅力について語ってくれました。

平野太呂(以下 H):初めまして。先日、お父さん(柄本明さん)を偶然にも今日と同じく下北沢で撮影しましたよ。
柄本佑(以下 E):あ、そうだったんですね、 本日もよろしくお願いします。
H:こちらこそ。 さて、今日着ているのはマーガレット・ハウエルとバブアーのコラボレーションアイテムですが、バブアーはもともと好きだったんですか?
E:そうなんですよ。もともとうちの妻が着ていたのを見て、「かっこいいな」と思っていたんです。そしたら、妻が「イギリスの伝統的なブランドで、スーツを着るような場所でも合わせられるコー トなんだよ」って教えてくれて、ますます気になっていて。そうしたら誕生日に買ってくれたんです。
H:素敵な話ですね。マーガレット・ハウエルについてはどういうイメージですか?
E:イギリスのブランドですよね。シンプルで大人っぽい印象です。バブアーもそうですけれど、トリッカーズとか、自然とイギリスのものを身につけていることが多いですね。きっと、好きなんですね。
洋服は全く詳しくないんですが、妻と付き合うようになってからは服好きの彼女に色々と教えてもらいました。「TPO」という言葉を知ったのも、妻のおかげです。「その格好で舞台挨拶行くの !?」 なんて止められたりすることも良くありました。
H:普段はどういうファッションが好きなんですか?
E:今日着ているバブアーのような、しっかりと着丈があって主役になるようなものは「これさえ着ておけば大丈夫」という気がして、安心しますね。あとは、やっぱり “育てる系” のものは好きです。
H:バブアーのようなオイルドジャケットも、“育てる系” ですよね。
E:そうですね。しばらくはオイルの匂いが気になることもありますけれど、だんだん馴染んで育ってくるのも醍醐味です。でも、この新しいモデルは最初からその匂いが気にならなくていいんですよ。
H:他にはどうですか?
E:あとはジーンズですね。必ずリジットで買って、お湯につけて一回水洗いして、それから1年は洗わない。中学のときにリジットで買ったジーンズがこの間やっと膝が破けたんですよ。それが嬉しくって。
H:随分時間がかかりましたね。
E:そうなんです。中学時代に大きめのインチを買ってたんで今でも穿けるんですけれど、もうペラッペラです。洋服は、長く着てアタリとか自分だけのクセが出てくる楽しみっていうのがありますよね。
H:僕の場合はスケートボードをするから勝手にどんどんボロボロになっていっちゃって、それを食い止めるっていう感じですね。
E:それもわかります。欲を言えば、はじめからボロボロのやつを買っちゃいたいくらいなんですけれど、同時に、物は大切にしたいって気持ちもあるんですよ。
H:だから中学のデニムが今までかかったんですね。
E:当時は、服にあまり興味がなかったんです。私服通学の中学校に通っていて「リジットデニムが丈夫だろう」っていう考えで、制服がわりにジーンズを買いました。ほぼ毎日同じような格好でしたね。
今もそうですが一番好きなのはジーンズ、白 T、それに革靴、みたいな着こなし。中学の時に憧れていた殿山泰司(昭和屈指の名脇役)スタイルから今も変わらないです。
H:中学のときのスタイルアイコンが殿山泰司!?
E:そうなんですよ、ジーンズの後ろのポケットに文庫本を入れて、下駄を履いて学校に行っていました。
H:すごいですね。目立ったんじゃないですか?
E:それが一番かっこいいと思っていたので。でもどうやらそうじゃなかったらしくって、全然モテなかったですね。

H:洋服に限らず「伝統」を重んじることはありますか?
E:芝居に関しては、感じることはあります。最低限、今の仕事を続ける以上、歌舞伎や落語、それに古い映画といった歴史あるものは観なきゃいけないなって思っているんです。「魚屋が魚の目利きできなくてどうする」ということじゃないですか。中学の時の夏休みに、新作 60 本くらい観たこともありました。
H:すごい、お金はどうしてたんですか?
E:映画に関しては親も少しお金を出してくれたんでしょうね。あとは夏休みに向けて小遣いを貯金したり、弁当代を節約したりして。三軒茶屋名画座で、確か4本で2千円とかで観られたと思います。
H:そこまでして、やっぱり映画館で観たいものなんですね。
E:映画って映画館で観るように作られていると思うんです。それと歴史を感じるアジな映画館が好きなんですよね。
H:古いもの好きなんですね? それは、なんでですか?
E:洋服もそうですが昔からあるものは、やっぱり頑丈だと思うんですよね。信用できるというか。
H:そのバブアーもトラディショナルな物ですよね。着た感じどうですか?
E:まず、軽いですね! オイルドコートって格好いいけれどすごく重くて肩がこるイメージだったのですが、これはとっても軽いのが良いんです。チェックの裏地も良い感じで。こういう男らしいアウターが好きなので、しっくりきています。
H:このタータンチェック柄も、古くからあるスコットランドの伝統的な柄ですね。
E:スコットランド? 実はスコットランドの伝統的な音楽にハマっていまして、だからこの柄にも惹かれてしまうのかもしれませんね。全体の色合いもすごく気に入っています。

COAT ¥76,000 >

KNIT ¥39,000 >

TROUSERS ¥27,000 >

SHOES ¥51,000 >

*商品は全て消費税抜きの価格です。

INTERVIEWER

平野太呂 写真家

Taro Hirano / Photographer

1973年、東京都生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。2000年よりフリーランスとして活動を開始。スケートボードカルチャーを基盤にしながらも、カルチャー誌やファッション誌、広告などで活動中。主な著書に『POOL』(リトルモア)『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)『東京の仕事場』(マガジンハウス)、フォトエッセイ『ボクと先輩』(晶文社)、『Los Angeles Car Club』(私家版)、『The Kings』(ELVIS PRESS)がある。渋谷区上原にて2004年からNO.12 GALLERYを主宰。

GUEST

柄本 佑 俳優

Tasuku Emoto/Actor

1986 年、東京都生まれ。2001 年、映画『美しい夏キリシマ』('03/ 黒木和雄監督 ) でデビュー。その後の映画主演作に、『17歳の風景~少年は何を見たのか』('05/ 若松孝二監督 )、『フィギュアなあなた』('13/石井隆監督)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』('18/ 冨永昌敬監督 )、また『きみの鳥はうたえる』('18/ 三宅唱監督 ) が 9 月 1 日より、『ポルトの恋人たち 時の記憶』('18/ 舩橋淳監督 ) が 11 月より公開される。