シャツのある生活

「シャツには私のスタイルが集約されています - 性別を問わず着ることができ、常にアップデートすることで新鮮さを失わないアイテムです」

─ マーガレット・ハウエル

写真家・平野太呂さんがマンスリーゲストとファッショントークを繰り広げる好評連載「LIFE NOTES」が、装いも新たにリニューアル。ゲストと共にマーガレット・ハウエルにまつわるテーマについて考えます。第7回目のテーマは「シャツ」。
平野さんと公私に渡り交流のある女優でモデルの菊池亜希子さんが、ご自身のシャツのルーツを語ってくれました。

平野太呂(以下H):ご無沙汰しております。今回から少し連載をリニューアルしてその第一回目のゲストです。
菊池亜希子(以下K):よろしくお願いします。テーマはシャツですよね?
H:そうなんです。マーガレット・ハウエルは、1970年にメンズのシャツを発表したことからスタートしたブランドなんですよ。だからシャツは、ブランドにとってはアイコンみたいなものなんです。今日着ているチェックのシャツはどうですか?
K:この丈のバランスが好きで、個人的には、ちょっと懐かしい感じです。母が良く着ていたシャツにすごい似ているんですよ。インしなくてもだらしなく見えないし、それでいてリラックスできる服ですよね。
H:ボックス型の半袖ってなんのイメージなんでしょうね? やっぱりユニフォームなのかな。
K:ガールスカウトっぽいデザインですね。
H:丸襟だけど女の子過ぎないのは、そういうところなのかもですね。
K:そのバランス感が私にはちょうどいいんです。完全にメンズものだと女性の私とは体型が異なるので、あまり綺麗に見えないんですよ。ちゃんと綺麗に見えつつ、でも甘くない。そういうバランスが大事なんです。このチェックのシャツには、それが備わっているんですよね。きちっと計算されたデザインというのはすごく頼もしい。
H:けっこう短く見えますけど、女性の隠したい部分が上手に隠れているなと、撮っていて思いました。
K:切り替えとか袖の太さとか広がり過ぎずタイト過ぎず、女性の体型をあまり拾わないんですけど、ゆったりした服、というわけでもないのがまたいいんですよ。
H:穿いているワイド目のトラウザーズとも相性がいいですね。
K:このスタイリングは、トップスがコンパクトでボトムスがストンって感じで絶妙なバランスなんです。
H:マーガレット・ハウエルの服は、昔のユニフォームなどからインスピレーションを受けていることもあるみたいなんですけど、メンズの要素がウィメンズに入り込んでいる服ってどうですか?
K:私は背が高くてサイズ選びが難しいんです。合うブランドを探すのがいつも大変で。マーガレット・ハウエルは、中世的な人に合う服を作っている印象があって、10代の時から自分の体形に合うブランドだなって思っていました。10年ぐらい前に買ったフリルシャツも好きで、生地の選び方とかフリルの付き方とかデザインがあまり甘くないんです。ザクザクとした感じで昔の男性のフォーマルウエアっぽいデザインだなって思って。ブラウスというよりもシャツに装飾が付いているイメージの服ですね。

K:私の両親は、トラッドなものが好きで6歳ぐらいからボタンダウンシャツを着させられていた記憶があります。
H:嫌やがらなかったんですか? うちの7歳の娘は、ボタンがあるとすごい嫌がるんですよ。
K:抵抗はなかったですよ。ちょうどその頃にテーマパークに連れて行ってもらって、やはりシャツを着ていたんですけど、合わせていたのがオーバーオールにギンガムチェックのボタンダウンシャツ。その格好をお姉ちゃんとお揃いでしていたのがすごいお気に入りで。昔から男の子っぽい格好が好きだったんですよね。
H:幼少期からシャツにふれてたんですね。
K:そうですね。フォーマルな服を着させられるんですけど、私は逆にそれが嬉しかったんです。ボタンを上までちゃんと留めて着るのが好きでした。
H:珍しいですね。その当時からキチッとしている方が好きなんだなんて。
K:父の影響だと思います。父はイギリス的なダッフルコートだったり、シャツとかベストとか、そういう格好する美学があって。幼い頃から「それがカッコいいんだ」みたいなことを良く聞いていましたので、それが染みついてますね。ちょうど背が同じぐらいっていうのもありますけど、中学生ぐらいから父の服を借りて着るようになったんです。
H:お父さんが嫌っていう時期はなかったんですか?
K:記憶にないですね。あまり反抗期がなかったし、ずっと髪が短かったのもありますが、男の子に間違われるのを嫌だと思ってなくて、逆によっしゃ! みたいな感じで。洋服の選び方もそうでしたね。小学生時代にスカートとかほとんど穿かなかったです。
H:いわゆるブリブリの女子っていう経験は?
K:そういう時期はなかったです。思いきり女の子っぽいものも可愛いと思えるようになったのは、大人になってからかもしれないです。
H:親の影響が大きかったんですね。
K:そうそう、洋服好きの両親と買い物に今もしょっちゅう行くんですよ。東京に出てくるときも何回も電話がかかってきて、このシャツを着ていこうかと思うんだけどどう? ってその日の服装を相談してきたり。うちの母がマーガレット・ハウエルがすごく好きで、私と兼用してるんです。
H:マーガレット・ハウエルの服は親子で兼用して着ている人も少なくないみたいですよ。なんでなんだろ? 生地のクオリティが良いので長く着られるし、お下がりをそのまま娘に、みたいなのもあるんですかね? フリルのシャツも10年選手ですよね? 
K:そうですね。物持ちがいいですね。気分によって着なくなる時期もあるんですけど。でもそれで処分したりはしない。特にシャツは。3年経って着なくても、4年目で着る事があるんですよ。
だから取っておくんです。
H:質がいいし、モダンで時代の気分はもちろん感じるけど、トレンドに左右されないマーガレット・ハウエルの服はストックしていても着られるのかも。
K:私、アイロンが得意じゃなくて、綺麗にキープするのが下手なんですよ。だから洗いざらしのまま着られるものが好きで、そういうのが重要です。
H:ウォッシュがかかっているシャツが多いですよね、マーガレット・ハウエルの服も。
K:そうなんですよ。自分でさらに洗っていくと、こういう生地って柔らかいだけじゃなくてなんか肌に吸い付くっていうか、毛羽立ちが皮膚のようになっていくっていうか。パリッとしたシャツは、袖を通すと冷やっとする感じがあって、それがパリッと引き締まっていいのかもしれないけれど。自分が何回も着て洗いを繰り返しているシャツは、着た時に包まれる感っていうのかな、いい意味でまとわりつく感覚が好きなんです。
H:着心地ってけっこう覚えてますよね。このシャツ着ると気持ちいい感じだよなって。意識してないけど、つい朝手に取っちゃうかもですね。
K:手に取らなくなるシャツって着心地が多分違うんです。女性ってそういう感覚よりは、ファッションのコーディネートとしてものを選ぶ人が多いかもしれないですけれど、今太呂さんが言っていたように確かになんか手に取っちゃう感覚っていうか、自分との相性を考えちゃうのかも。それと子供が生まれてから環境が変わって、そういう気持ちが余計に強くなっている気がします。
服を選ぶ基準も変わってきましたね。洋服には癒してほしいって気持ちが強いです。シャツは好きだし着ていたいけれど、疲れるシャツは絶対着たくない。
H:このシャツも着心地がいいってこと?
K:そうですね。でも、楽だってことは重要なんだけれど、楽に見えるファッションは嫌。これはカチッとみえますが、着てみるととっても楽で気持ちがいい! そういうシャツをこれからも選んでいくんだと思います。

SHIRT ¥25,000 TROUSERS ¥27,000 SHOES ¥90,000 * 商品は全て消費税抜きの価格です。

INTERVIEWER

平野太呂 写真家

Taro Hirano / Photographer

1973年、東京都生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。2000年よりフリーランスとして活動を開始。スケートボードカルチャーを基盤にしながらも、カルチャー誌やファッション誌、広告などで活動中。主な著書に『POOL』(リトルモア)『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)『東京の仕事場』(マガジンハウス)、フォトエッセイ『ボクと先輩』(晶文社)、『Los Angeles Car Club』(私家版)、『The Kings』(ELVIS PRESS)がある。渋谷区上原にて2004年からNO.12 GALLERYを主宰。

GUEST

菊池亜希子 女優・モデル

Akiko Kikuchi / Actress, Model

1982年、岐阜県生まれ。モデルでデビュー後、ドラマ・映画・CM・ 舞台など女優としても活躍。また『菊池亜希子ムック マッシュ』では、台割、ページディレクション、キャスティング、モデル、イラスト、文章…そのすべてを本人が手掛ける編集長に。著書に『みちくさ』『みちくさ2』『みちくさ3』『菊池亜希子のおしゃれのはなし。』(以上小学館)、『菊池亜希子のおじゃまします仕事場探訪20人』(集英社)、『絵本のはなし』(白泉社)がある。 現在、書籍『好きよ、喫茶店2』の刊行に向けて準備中。