LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々を訪ね、リラックスした空気の中で交した対話を記すLIFE NOTES。キャリアを振り返り、日常を顧みながら、日々の生活で大切にしていることやそれぞれの衣服への想いが語られています。

今回登場するのはショパン国際ピアノコンクールのセミファイナリストにして、"Cateen(かてぃん)"名義で幅広い人たちを魅了するピアニスト、角野隼斗さん。

COAT ¥69,300 , TROUSERS ¥59,400

包まれるような感覚が心地いい

ニューヨークに住むようになって、改めて自分が何者であるかを考えるようになりました。例えばクラシックのフィールドで即興ができるということは、ジャズが盛んなニューヨークでも当たり前ではなかったので、なにが自分の個性かをより強く考えるきっかけになりましたし、同時にクラシックが自分の土台にあることを再認識しました。ピアノを習い始めてから20年以上経ちますが、やめようと思ったことは一度もありません。常に好奇心を追い求めて、自分が「楽しい」とか「面白い」って思えるものを自分なりに咀嚼して、解釈して皆さんに届けることをいつも大切にしています。

もちろんピアノは毎日弾きますが、海外の移動も多いので日常生活はかなり流動的で、特にルーティンはありません。服はピアニストとして手や肩が動かしやすいものがいいですね。もちろん長く使えるものなのかどうかも。マーガレット・ハウエルの服は全体として包まれるような感覚があって、着心地や手触りがいいので着ていて嬉しくなりますね。僕は衣装を選ぶときにも心地よさを求めていて、それはタキシードを着るようなONの時であっても変わらず、快適に体を動かせるかどうかというのは僕にとって大事です。

変わらないようでいて、常に変化を続けている

マーガレットさんがファッションデザイナーではなくクロージングデザイナーとご自身を称することに共感を覚えます。彼女の発言を聞くととても職人気質だと思うし、日本人的な考え方にも通じると思います。自分に重なる部分もあると思いました。例えば建築的なクリエイション。クラシックの場合は曲が長くなればなるほど数学的な論理構成が必要されますから。もちろん理論だけでは駄目で、溢れ出る感情こそ大事ではありますけれど。

クラシック音楽は楽譜がまず偉大な存在でありながら、それをどう解釈するかが大切です。作曲家が譜面に書けることは限りがありますから。平面にある音符の正確な再現ではなく、演奏家に求められることはそれを立体化させること。捉え方や考え方は本当にさまざまで、その感覚は時代によっても変わる。マーガレット・ハウエルのスタイルは変わらないようでいて常に進化を続けていると聞きましたが、クラシック音楽もまさしくそうで、だからこそ「今」できることを僕は常々考えています。

角野隼斗
ピアニスト
1995年生まれ。2018年、東京大学大学院在学中にピティナピアノコンペティション特級グランプリ受賞。2021年、ショパン国際ピアノコンクールセミファイナリスト。これまでにポーランド国立放送交響楽団、ボストン・ポップス・オーケストラ、ハンブルク交響楽団、日本有数のオーケストラと共演。“Cateen(かてぃん)“名義で活動するYouTubeチャンネルは登録者数が125万人超。拠点にニューヨークを移し、世界各地に活動の幅を広げている。2024年、自身最大規模の全国22公演のツアーを開催予定。

角野隼斗オフィシャルサイトはこちら

DIRECTOR / STYLIST: HIDERO NAKAGANE
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
HAIR MAKE-UP: MAIMI
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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