LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々をゲストに迎え、彼らとの対話を記す冬のLIFE NOTES。創作の現場を訪ね、束の間のリラックスした時の中で彼らから心地よく語られたのは、それぞれの衣服への想い、作品のインスピレーションの源。それに日々の生活について。

今回のゲストは『奇界遺産』フォトグラファーとして知られ、世界中を旅しながら瞠目に値する景色を届けてくれる佐藤健寿さん。

今年2度目となる北極から戻ったばかりの佐藤さんが、いつになく自然体で綴ったLIFE NOTES。

思考が服作りにも表れている

生活の大半は旅をしているわけですが、意識することがあるとするなら、シームレスであること。いかにも旅行者とか、一目でカメラマンって分かってしまうようなスタイルはしたくないですね。ここからアフリカに行けって言われたらこのまま空港に向かえるくらいのマインドでいることが自分らしさだと思う。自分らしい服を選ぶことで、結果的に移動時でも撮影でも身体が自由に動けて、かつ、そのまま街でも過ごしても違和感がない、というスタイルに必然的になりましたね。

マーガレット・ハウエルって建築やアートにも造詣が深いですよね?そういう洋服以外の分野から得たアイデアや思考が服作りにも表れている気がします。モノ自体はしっかりしているのに、動いていても身体が制限されることがない。そのうえ装飾性も担保されている。機能とデザインに対して折衷できる部分が見えているのは、彼女の文化や歴史に対する好奇心に起因するんじゃないでしょうか。僕も写真をやっているからといって写真集ばかり見るんじゃなくて、専門外のことから情報を得て、取り組むことに面白さを感じています。

危険なほど便利な暮らしに慣れている

僕が出演するTBSの『クレイジージャーニー』や作品集である『奇界遺産』から“奇妙なものを撮る人”っていうパブリックイメージがあると思います。でもこれまで相当数の国に足を運んだ経験から感じているのは、奇妙なものはそもそもこの世界にあるのかな、ということ。アフリカやパプアニューギニアの少数民族からしてみれば、取材しに来ている僕らの方が奇妙に見えているはずだし、「普通」の視点は誰、どこから見るかによって全く違う。当たり前の話だけど、そういうことを誰しも忘れそうになる。いろんなところにいけばいくほど、いかに普通ということが曖昧な概念かということを思い知らされます。

撮影の姿勢としては、僕自身は自然体であることを大切にしています。常にニュートラルでいられること。行く先々でその都度感動していたら身が持たないですし、やっぱり冷静じゃないと自分の作品を撮れないです。もっと言えば狙って撮ったものより、後で見て“なんでこんなのものを撮ってたんだろう?”って思えるような写真が面白かったりもします。条件反射で撮ったものは、白々しさがないっていうのでしょうか。そういう自然さと意匠とのぎりぎりの接点みたいな面白さを、マーガレット・ハウエルの服からも感じています。

佐藤健寿
写真家。写真集「奇界遺産」「奇界遺産2」「奇界遺産3」(エクスナレッジ)が異例のベストセラーに。TBS系列『クレイジージャーニー』、NHKラジオ第1『ラジオアドベンチャー奇界遺産』、テレビ朝日『タモリ倶楽部』、NHK『ニッポンのジレンマ』ほか、テレビ・ラジオ・雑誌への出演多数。

DIRECTOR: KYO KUBOYAMA
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
STYLIST / CO-DIRECTOR: HIDERO NAKAGANE
HAIR & MAKE-UP: RISA FUKUSHIMA
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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