LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々をゲストに迎え、彼らとの対話を記す冬のLIFE NOTES。創作の現場を訪ね、束の間のリラックスした時の中で彼らから心地よく語られたのは、それぞれの衣服への想い、色や音などインスピレーションの源。それに日々の生活について。

今回登場いただくのは、東京を拠点に新世代を代表するエクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」のボーカリストであり、時にメディアで類稀な料理の腕前を披露することもある長塚健斗さん。

多くのトップアーティストたちが信頼を寄せる都内のスタジオで、長塚さんと綴ったLIFE NOTES。

作った人の想いも感じ取るからこそ、気分が上がる

自宅のクローゼットの中は、ステージで身に着けるものも含まれているので、派手なものから落ち着いたものまで幅広く服が並んでいます。僕はステージの上でも、日常でも、心を奮い立たせてくれることを服に求めてしまいます。例えば、オーダーメイドのアイテムならサイズ感がしっくりくるのは当たり前ですよね。でも作った人の想いも感じ取るからこそ、気分が上がる。これは実際に最近経験した感覚で、服で気分が上がると、自分のパフォーマンスも圧倒的に上がります。

素材からマーガレット・ハウエルのクリエイションがはじまり、着た人の気分が上がる日常着を作ることを目的としていることや、購入後は、その人自身で服を育てることを前提としている彼女の考え方に共感を覚えます。服をリアルな日常として考える。とても大切なことだと思います。自分自身に置き換えると、歌を作るうえで言葉は素材であり、自分の日常を切り取ってリアリティを反映できない限り、歌は生まれないんです。詩を作る時、その時自分が感じている感情を言葉にします。なぜ英語なのか、なぜカタカナなのかって違いさえも、その時々の感情があってやっと詞にすることできる。ミュージシャンとして、僕は叙情的なタイプなのかもしれません。

誰かの心に触れるための欠かせない手段

人の感情に触れることでしか、インスピレーションを得ることはできないと思っています。熱のこもった人の作品を観る。自分が作った料理を誰かと食べる。オーディエンスの前で歌う。そんな人との関わりがあればこそ、自分の殻から一歩踏み出すことができます。マーガレットの服もそうですよね。その人の人生に寄り添いたいと思って作られているから、何年も使われることになっていますよね。自分の歌もそうやって聞く人の心に残ってほしい。そう願っています。

衣食住は大切だと思いますが、残念ながら音楽はそこに含まれないかもしれない。直接的に生死を分かつものではありませんからね。だからなのか、自分が料理をすることで、必ず必要なものを提供できることに歓びを感じます。それでも音楽は、僕にとっては料理と同様に誰かの心に触れるための欠かせない手段であり、その有機的なやりとりに終わりはないと思うんです。作った料理を美味しいと言ってもらえることと、届けた歌に熱い眼差しと拍手をもらえること。どちらの場合も与えているようで、逆に何かをもらっている感覚があります。

長塚健斗(WONK)
東京を拠点に活動する4人組エクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」のボーカリスト。SUMMER SONIC 2017、東京JAZZ、FUJI ROCK FESTIVAL '19、Greenroom Festival '18、ヨーロッパや台湾など海外公演にも出演など活動の枠を広げ、2019年より全国ツアーを開催。料理人としての一面も持ち、大学在学中よりイタリアンやフレンチの有名店出身のシェフの下で本格的に修行を開始。卒業後、都内ビストロの立ち上げに料理長として携わる。最新作は2022年5月にリリースしたアルバム『Artless』。
https://www.wonk.tokyo

DIRECTOR: KYO KUBOYAMA
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
STYLIST / CO-DIRECTOR: HIDERO NAKAGANE
HAIR & MAKE-UP: RISA FUKUSHIMA
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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