LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々をゲストに迎え、彼らとの対話を記す冬のLIFE NOTES。創作の現場で、束の間のリラックスした時の中で彼らから心地よく語られたのは、それぞれの衣服への想い、色や音などインスピレーションの源。それに日々の生活について。

今回登場いただくのは、アーティストのひがしちかさん。かつてCoci la elle(コシラエル)として自身のデザインによるハンドメイドの日傘を届けてきた彼女は、現在長野県八ヶ岳に住居を移し、豊かな自然と共に新たな創作活動の準備を進めている。

八ヶ岳の澄んだ空気の中、ひがしさんと綴ったLIFE NOTES。

服にも当然「道具」としての側面が
あると思っています。

日々の生活の中で、誰かに会う日であれば相手のことを想像して服を選ぶし、会わない日でも少し気分を上げたいとか、リラックスしたいとか、その季節、その日ごとのムードはあります。でも、長野に引っ越してきて、山と共に暮らすようになってからは、日常的に着る服と、特別なときに着る服との境目がなくなったように感じます。絵を描くから汚れてもいい服を着るんじゃなくて、いい絵を描きたいからこそ、お気に入りの服を纏っていたい。そんな思いの延長線上に、服の機能性も求めるし、用途や目的をしっかりと自覚しておくことは、私が普段使う水彩絵の具やアクリルと同じように、服にも当然「道具」としての側面があると思っています。

SLIPPERS ¥82,500(11月入荷予定)

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マーガレット・ハウエルって、まず彼女本人が魅力的なんですよね。デザインのみならず実用的であることを念頭にアイテムが作られている、それを定番化させていることが素晴らしいと感じます。私が作っていた傘もそうですが、いいデザインっていうだけでも、機能があるだけでもダメっというか。商品と作品の中間であることがとても大切な時代になっていると思うんです。ものづくりにおいて、デザインと機能のバランスや、その距離の測り方は彼女との共通項かもしれません。

見えないものを、
自分の作品を通して可視化したい

光が綺麗だとか、色を意識したりなど、日々の出来事からインスピレーションを得ることはあります。子供の泣き声や、偶然できた滲みなどの目に見えないものを、自分の作品を通して可視化したいと私は思っているんです。無意識の中で生まれたものの方が愛着を持てるし、意図的になにかを狙うよりその方がいいと思い、普段から作品を作っています。

高校生の時から自分の人生でやりたいことが3つあって、ひとつは母になること。そして絵を描くこと。あとは衣食住を作ること。今はこの3つめの願いを実践しているところですね。長野に引っ越すきっかけは主人が山好きだったから。それだけの理由だったのに、どんな環境で、どのようなエネルギーで暮らしていくのかは興味にも課題にもなり今では、自分が使う画材が環境に負荷のないものかも、確認するようにもなりました。服も素材ありき。それが生きていくための服だと思うし、山で暮らしているからといってなんでもいいわけじゃありません。「いい」服を着ていたいと思っています。

ひがしちか(アーティスト)
2010年より一点物の日傘作りからスタートしたブランドCoci la elle(コシラエル)を運営。手描きや刺繍、デコラティブな装飾などさまざまな日傘のほかに、雨傘や小物など瑞々しい色彩豊かな作品をラインナップする。2022年に傘屋としての活動を休止し、現在はアトリエを長野県八ヶ岳の山麗に構え、創作活動を続ける。

DIRECTOR: KYO KUBOYAMA
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
STYLIST / CO-DIRECTOR: HIDERO NAKAGANE
HAIR & MAKE-UP: RISA FUKUSHIMA
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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