家族をつなぐ、マーガレット・ハウエルのスタンダードな服たち

ブランド創立50周年を迎えたマーガレット・ハウエル。これを記念して、以前好評だったLIFE NOTESが再スタート。LIFE NOTESセカンドシーズンでは、ブランドと縁のある方々をお招きし、出会いのエピソードや思い出のアイテムなどについて語っていただきます。今回のゲストは、自身の店『LIFE son』でもアーコールの椅子やエプロンを愛用し、家族揃って愛好家であるという相場正一郎さんと千恵さん。前回より、オーディオコンテンツの配信も開始。インタビュー時の生の声をお届けします。

お二人とマーガレット・ハウエルの出会いについて教えてください。

千恵さん 私がもともとマーガレット・ハウエルを好きで、20代の頃、まだ昔のロゴが使われていたときから、シャツや冬物のスカート、ニットなどを買っていた覚えがあります。その頃の自分からしたらなかなか簡単には手を出せない憧れのブランドでしたから、思い切った買い物で、かなり大切に着ていましたよ。

正一郎さん 僕が初めて買ったのはいつ頃なんだろうなぁ…。もう記憶がないくらい昔であることは間違いありません。

千恵さん マーガレット・ハウエルのお店にはよく一緒に出かけていたよね。

正一郎さん そうだね。神南店のカフェが好きでよく行っていました。最初は、神南店でシャツか何かを買ったのだと思います。妻と知り合ってからマーガレット・ハウエルの服を買うようになったんです。あとは、マーガレット・ハウエルの中田さん(現アングローバル取締役・中田浩史)が、うちの店によく来てくれていた常連だったことも大きかったですね。彼が出張でフランスに行っているときに、うちの元スタッフが留学してパリのローズベーカリーで働いていて中田さんと再会したそうです。中田さんの帰国後にまたその話で盛り上がり、その頃から公私ともに仲良くさせていただくようになりました。それから『LIFE son』がオープンした2012年に、中田さんが「MHL. COMMUNITY MART」というMHL.を中心に、衣食住の様々なカテゴリーのブランドやショップを集めたマーケットイベントを企画して、そこに僕らも参加したんですよ。

その後、ご家族でMHL. のムック本にもご出演いただいています。

千恵さん 家族で一緒に撮影した、良い思い出ですね。

正一郎さん この頃は、子供服もやっていましたよね。僕らもお祝いでいただいて、それがとても良かったから、自分たちでも購入したり、友人へプレゼントもしていました。

今日お召しになっている服も、マーガレット・ハウエルものだとか。

千恵さん 今日着ているサマーニットは、MHL.のものです。サマーニットって、だいたい洗っているうちに型崩れしちゃうんですよね。これは3年前にお店で見つけて、袖が長めなところを気に入って。パンツにも、スカートにも合うので、毎年夏になるとよく着ています。このブランドのものは、縫製もしっかりしていて、洗濯しても型崩れしづらくて長く着られます。

正一郎さん 僕が今着ているのは、夏用のカーディガン。服をあまり頻繁に買うタイプではないのですが、マーガレット・ハウエルのニットが好きでいくつか持っています。流行り廃りのあるデザインではなくスタンダードで、細かいところまですごく気が使われているんですよね。自分じゃあ選ばない色がラインナップされていることも多いのですが、それでも着てみるとしっくりくるんですよ。

千恵さん あとは、子供の入学式や祭事用にスーツも買ったよね。

正一郎さん あぁ、そうだね。友人の結婚式にも着ていっている、僕の一張羅です。とあるお店のレセプション用に作ったんですが、けっきょく当日はコックコートで良いと言われてそのときは着なかったんですけれど、その後何かと重宝しています。

千恵さん 子供服があった頃は、子供にもよく着せていましたね。ニットを着せていると、必ず人にも褒められていたのを覚えています。あと長男の小学校の卒業式で着せたのも、マーガレット・ハウエルのスーツ。何を着せようか迷っていたのですが、ご縁があって着せることができて嬉しかったです。

正一郎さん 長男は身長が高いのですが、やっぱりまだ子供だから体つきは細いんだよね。でもスーツの中には僕のニットを着ていて、まだ少し大きいんだけれど、中に着るくらいだったらいいかなって…。

千恵さん 小さい頃から度々マーガレット・ハウエルを着せていて、お店でも色々な人と会っているから、彼にとっては身近なブランドなんじゃないですかね。

ファッションの英才教育ですね。お洋服が好きな大人になるのでしょうか。

正一郎さん 僕がイタリアで修行をしていたとき、周りにバブアーを着ている人が多くて、自分も何着か持っていたんです。日本ではなかなか手に入らないときだったので、まだ子供も生まれていなかったのに子供用を2サイズくらい買って日本に帰ったんですよ。自分に子供ができたら着せようと思って。そのバブアーを、小さいときに着せていました。今は僕のサイズも着られちゃうくらい大きくなりましたが。

千恵さん 最近、マーガレット・ハウエルがバブアーとコラボレーションしていたのもとても素敵でしたよね。二人で気に入って着ています。

正一郎さん そうそう、丈の長いやつとかぶりのやつと。かっこいいよね。

ニューノーマルがうたわれて、自宅で過ごす時間が増えたと思いますが、何か変化はありましたか。

千恵さん 一番は、子供と過ごす時間が増えたことですね。塾も習い事もないし。だから、息子は夫と、娘は私と、一緒に料理をしたりして楽しんでいました。あとは80年代、90年代の映画を一緒に見たりしていますね。不思議と、親と好きなポイントが近いみたい。

正一郎さん 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『E.T.』とか、僕の時代に流行ったハリウッド映画を一緒に見るというのは昔からよくやっていたんですよ。子供も一生懸命見て、けっこうハマるんですよね。時代が違っても、何回も見て覚えるくらい好きになるんです。僕は自営業でお店も近いのでちょこちょこ帰ってこられることもあって、“おうち時間” はこれまでも長い方だったと思うんですよ。でも子供達が昼間も家にいるということはなかったですからね。子供達は飽き飽きしている様子もなく、たまにお店に連れていったりもして、手伝ってもらったりしています。

参宮橋『LIFE son』ではマーガレット・ハウエルで購入されたアーコールの椅子を使われているそうですが、数ある中からこの椅子を選んだ理由を聞かせていただけますか。

正一郎さん パリのローズベーカリーで、アーコールの椅子をスタックしている様子を見て、良いなと思っていたんです。ブランドの歴史が続いているということは、良いものを作っている証しですよね。だから、自分が長く使いたいと思う物はそんな信頼感、信用感のあるブランドのものを選んでいます。椅子だけではなく、エプロンやクロス、バターケースもマーガレット・ハウエルのもの。デザインもベーシックで丈夫だし、わりと色々な雑貨を使っていますよ。マーガレット・ハウエルのお店を訪ねるときも、妻が服を見ている隣で僕はハウスホールドグッズばっかり見てしまうこともあるくらいです。昔デッキチェアにも出会って、今は那須の家に置いてあります。

マーガレットさんが来日したときに相場さんのお店を訪れたことがあるそうですが、その時の印象をお聞かせください。

正一郎さん マーガレットさんはとてもリラックスした感じで、食事やお酒を楽しんでいかれました。お店に並べている雑貨を色々と手に取り、興味深く眺めていたのが印象的でしたね。その日マーガレットさんがやってくることは知らなかったのですが、僕はちょうどマーガレット・ハウエルのシャツを着てお店に立っていて、そんな僕を見て心なしかニコッと微笑みかけてくれたような気がします。

最後に50 周年を振り返って、ブランドの魅力について一言お願いします。

正一郎さん マーガレット・ハウエルさん自身が、衣食住、そして生き方まで、たくさんの物を見て吟味してきた人という印象です。そんな人が作っている服ですから、素敵なのは当たり前ですよね。デザインや色、雰囲気はもちろんですが、マーガレットさんの哲学が込められているところが僕は好きですね。

千恵さん 私は、はじめにマーガレット・ハウエルの服を好きになりました。彼とは逆で、そこからマーガレットさんの世界観を知ったんです。ひとつのシャツをとっても、ボタンを襟元まで留めてきっちり着るのと、一つ外して腕まくりなんてして着崩すのでは、全然違う表情になったりする。そんなシャツがすごく綺麗な形だから、何年も着られる物なのだと思うんです。私もマーガレットさんを拝見したときに、とてもリラックスした様子で服を着こなしてらして、それがすごく素敵だなと思いました。そんな佇まいを見てますますマーガレットさんのことが気になり、彼女の本も買うようになって、20代の頃とは違うブランドの魅力に気がつくことができました。マーガレット・ハウエルの服そのものも、歳を重ねた目線で見るとまた違う魅力が見えてくるんです。

PROFILE

相場正一郎、千恵・あいばしょういちろう、ちえ/オーナーシェフ

正一郎さんは、イタリアで修行後、原宿のレストランで店長を経て独立。 2003 年に代々木八幡に自身のレストラン「LIFE」をオープンし、現在では全国に4 店舗のレストランを運営。フリーペーパーの発行やワークショップ、プロダクト制作、コンサルティングなど幅広く活動。著書に『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)、『LIFE のかんたんイタリアン』(マイナビ)がある。千恵さんは、歯科衛生士を経て、現在「LIFE」の仕事をサポート。

PHOTO: TETSUYA ITO
EDIT: YU_KA MATSUMOTO
TEXT: RIO HIRAI
SOUND ENGINEER: SHINSUKE YAMAMOTO