リネンの魅力

「リネンの原料となるフラックスはすべての部分に用途があるので大好きです。種は食用に、クリケットバットの手入れにはそのオイルを使います。鞘が入ったチップボードは頑丈になります。粗い繊維は撚り合わせてロープや紐に紡ぎ、もっともきめの細かい繊維がリネン地に織り上げられるのです」

─ マーガレット・ハウエル

写真家・平野太呂さんがゲストとトークを繰り広げる連載「LIFE NOTES」。ゲストと共にマーガレット・ハウエルにまつわるテーマについて考えます。第8回目のテーマは「リネン」。マーガレット・ハウエルのアイテムに対しても造詣が深いスタイリストの中兼英朗さんがリネンの魅力について語ってくれました。

平野太呂(以下H): 中兼さんとは、確か何人かでピクニックした時にご一緒したことありましたよね?
中兼英朗(以下N):そうでしたね。それ以外にも僕が担当しているミュージシャンの撮影でお会いしましたよね。
H:あ、そうでしたね。今回のテーマは「リネン」です。普段からよくリネンシャツは着ているんですか?
N:着ていますよ。マーガレット・ハウエルの洋服って、洋服以外の、仕事や趣味に強い趣向がある人がさらっと手に取って似合う洋服だと思うんです。暮らしの中にさらっと、BGMのように入ってくるイメージ。僕はもともとフォークソングがすごく好きで、レコード屋に入り浸っていた時期もあったんですけれど、自分の仕事や子育てが忙しくなってからは良い意味で「聞き流せる」音楽を求めているところがあって、マーガレット・ハウエルの洋服を選ぶ行為も、その感覚に近いところがあるような気がしています。
H:そういう意味では、お洒落を熟知した人が辿り着く洋服かもしれませんね。
N:イメージの強い洋服も私物で持っているけれど、気がついたらいつのまにか袖を通さないまま長い時間が経っていたりして……。でもマーガレット・ハウエルの洋服は、様々なTPOに対応するので出番が多いんです。
H:着心地が良いっていうこともあるのでしょうか。
N:もちろんそれもありますね。あと洋服で、「なんか、一つ余計だなぁ」ってことって案外多いじゃないですか。そういうことがマーガレット・ハウエルには全くないですよね。
H:なるほど、それ、わかる気がします。マーガレット・ハウエルの服は、シンプルですけど完成されていますからね。リネンも昔から好きなんですか?
N:リネンの洋服は中学時代から着ていましたよ。でも、良さがわかって着始めたのはもっと大人になってからですけれど。
H:リネンの良さに気が付いた、きっかけってなんだったんですか?
N:はっきりは覚えてないんですけど、多分最初は、ベッドのシーツだったかもしれません。母親がシーツをリネンに変えてくれて「この気持ちよい素材はなんだ!」って思って、その肌触りを気に入ったんでしょうね。
H:リネンのシーツって気持ちが良いですよね。でも、幼少期からその良さに気付いていたっていうのはかなり早熟かもしれない。

H:僕はまだ、リネンの洋服は持っていなくって……。どういうシチュエーションで着たら良いんでしょうか。
N:丈夫なものなので、普段からガンガン着てもらって良いと思います。軽いジャケットの下に着て芯がないネクタイを締めれば、カジュアルな結婚式の二次会にも着ていけるような印象になりますよね。
H:ちょっとシワシワになっているくらいが丁度良い感じがして、使い勝手も良さそうです。
N:リネンはそもそも自然なシワが楽しめる素材ですが、マーガレット・ハウエルの服は都会的なシャープさもきちんと残しているし、だらしなくならないんですよ。
H:それは僕も感じます。
N:人によっては嫌がる人もいるかもしれないけれど、僕は使っていくうちにポケットのフラップや裾の角がめくれ上がってくる部分とか、そういう癖がつくところも好きです。どんどん自分のものになっていく感じが良いんですよね。
H:育てて行く感覚って確かにいいですよね。
N:そうですね。涼しくって肌触りが良い印象は、夏に畳が気持ち良い感覚に近いかもしれないです。テニスをするのが好きなんですけれど、いっそどこかのブランドが、リネンでテニスウエア作ってくれないかなぁって思っているくらい。
H:それ面白いですね。ハードなシチュエーションでも着られるってことですよね。僕も欲しいなぁ。
N: あと、色も大切なんですよ。今日マーガレット・ハウエルのリネンシャツをいくつか持ってきているんですが、どれも色合いがとっても良いんです。
H:アースカラーっぽいものが多いですね。
N:そうなんです! これは人から聞いた話ですが、「時間を経て褪せた、石ころや葉っぱといった自然のものが持つ絶妙な中間色を洋服にしたい」とマーガレットさんが話していたというエピソードを聞いて、とても素敵だなと思ったんです。だからマーガレット・ハウエルの洋服を見ると、「このシャツはマーガレットさんが見た、曇り空の色なのかな」なんてイメージしてしまいます。全然違うかもしれないですけどね。
H:今日着ている白いリネンシャツもなんかすごく品がありますよね。
N:仕事着としてもリネンシャツってよく着ているんですけど、作業中に何気なく通りかかる俳優さんとかに、「良いシャツですね。僕もそういうシャツが似合う男になりたいです」なんて声掛けられたりするんですよ。
H:スタイリングでも、リネン素材のアイテムを使うことってあるんですか?
N:もちろんありますよ。映画のスタイリングでも、リネンを積極的に使いたいんですよね。長回しであればあるほど、陽の光やそのとき吹いた風、人の細かい仕草に着ているものが馴染んで、スタイリングのディテールからもその役のディテールが見えてくる。だからこそ、その人の生活感や人間像がシワとなって現れるようなリネンのシャツを使うことができたらって思います。
H:話を聞いているうちに、僕もリネンシャツがだんだん欲しくなってきちゃいました。

SHIRT ¥30,000 TROUSERS ¥25,000 SHOES ¥80,000(店舗限定) * 商品は全て消費税抜きの価格です。

INTERVIEWER

平野太呂 写真家

Taro Hirano / Photographer

1973年、東京都生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。2000年よりフリーランスとして活動を開始。スケートボードカルチャーを基盤にしながらも、カルチャー誌やファッション誌、広告などで活動中。主な著書に『POOL』(リトルモア)『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)『東京の仕事場』(マガジンハウス)、フォトエッセイ『ボクと先輩』(晶文社)、『Los Angeles Car Club』(私家版)、『The Kings』(ELVIS PRESS)がある。渋谷区上原にて2004年からNO.12 GALLERYを主宰。

GUEST

中兼英朗 スタイリスト

Hidero Nakagane/Stylist

1997年からスタイリスト二村毅氏に師事し、2000年独立。雑誌や広告、タレントやミュージシャンのスタイリングなど幅広いフィールドで活躍。夫婦共にスタイリストで、二児の父でもある。マーガレット・ハウエルではカスタマーズルックのスタイリングも担当するなど、ブランドに対する造詣も深い。