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Hiroshi Eguchi/Yuko Yamamoto
江口宏志/蒸留家見習い
山本祐布子/イラストレーター 写真家・平野太呂さんの感性とシンクロするさまざまなクリエイターに密着する連載コラム「LIFE NOTES」。第6回目となる今回は、江口宏志さん・山本祐布子さんご夫妻が暮らす千葉県大多喜町を尋ねました。 -
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COAT ¥69,000 SHIRT ¥28,000 JUMPER ¥23,000 TROUSERS ¥26,000 KNIT HAT ¥15,000
*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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SHIRT ¥28,000 JUMPER ¥23,000 TROUSERS ¥26,000 SHOES ¥13,000
*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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平野太呂(以下H):こちらでの生活は慣れましたか?
江口宏志(以下E):ちょっとずつ。もともと薬草園だったこの場所に「mitosaya大多喜薬草園蒸留所」と名付けて開設に向けて準備していて、春にはなんとかお酒ができるようにしたいなと思っているところです。クラウドファウンディングに協力してくれた人たちにもそうお知らせしているので、今は毎日やることがいっぱいですよ。
H:これだけの広さだし、大変ですね。僕がここに来るのは、今日で2度目かな。
E:僕たちが大多喜に越してきたのが今年の3月末で、たしかGW頃だからまだ何もなかった時ですね。
山本祐布子(以下Y):その時は、うちの家族と太呂さんの家族が一緒になって、ここを探検してみようって感じでしたね。
H:家族ぐるみで仲良くしているけれど、一緒に仕事をしたことは過去に一回あったかなぁ、くらいかも。江口くんとは仕事をはじめてから知り合いになったけれど、実は祐布子さんの方が長い付き合い。小学校から高校まで同じ一貫校に通っていたんだよね。
Y:そうですね。顔見知り、くらいで話したことはなかったけれど。
H:今日着ているものも似合っているけれど、祐布子さんは、昔からマーガレット・ハウエルのお店には行ってたんだって?
Y:そうなんです。今日着ているセーターも、すごく柔らかくて温かくて着心地が良いです。昔からマーガレット・ハウエルは好きで、エプロンもずっと使っているんですよ。神南のお店に行くようになったのは、二十歳くらいの時かな。当時はまだ学生だったからお洋服はあんまり買えなかったけれど、お店自体にすごく憧れがあって、お花や写真集を買いに自転車でよく通っていました。
E:お店の空気感がすごく良いよね。イギリスの日用品が並んでいるところに、スッと洋服が馴染んでいる。文脈が繋がっている感じがするから、僕なんかも居心地が良いんです。
Y:江口さんはマーガレット・ハウエルのパジャマに凝っていたよね。
H:そうだったんだ。どんなところが気に入ってたの?
E:他のものとは代え難い手触りの良さなんですよ。マーガレット・ハウエルのパジャマと出会って、すごく気に入ったので、祐布子にもプレゼントしたことがあったね。今日僕が着ているニットは、上質だけど、このまま作業にも出られるラフな感じもあって、すごく良い。僕は「家の中で着ているものをそのまま外に着ていく。外で着ているものを家の中でも着られる」そういうものを求める考えがあって。
Y:私がもらったのはカシミヤのパジャマで、江口さんはリネン。以前友達が「全身マーガレット・ハウエルが似合うおばあちゃんになりたい」と言っていたんですけれど、その言葉が私にもしっくり来ているんですよね。もちろん若い時から好きだし、今も少しずつ集めているんですけれど、歳を重ねてもっと自分のことを知れたら、すごく格好良く着こなせるんじゃないかって思うんです。マーガレット・ハウエルの白いシャツをビシッと着こなして颯爽とスカーフをつけているおばあちゃんって、素敵じゃないですか。だから今持っているものも、歳をとるまで大切に持っていたいなって思っています。
E:まずマーガレットという人がおしゃれだよね。「マーガレット・ハウエルの『家』」がすごく素敵で、こんなにおしゃれな人がいるのかって驚きました。
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KNIT ¥28,000 SHIRT ¥27,000
SHIRT ¥28,000 JUMPER ¥23,000 TROUSERS ¥26,000 SHOES ¥13,000*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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KNIT ¥28,000 SHIRT ¥27,000 TROUSERS ¥26,000 SCARF ¥15,000
ASAHIYAKI JUG ¥8,000 BUNACO BOWL ¥14,000 PLATE ¥4,500*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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SHIRT ¥27,000 KNIT ¥28,000 TROUSERS ¥26,000 SCARF ¥15,000 SOCKS ¥3,500 SHOES ¥51,000
ERCOL STOOL 425 ¥59,000*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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H:前に僕たち家族で遊びに来た時も、この温室で祐布子さんが作ってくれたごはんをご馳走になって、すごく良い時間でした。
E:友人が来るとたまにここで食事したりしています。今の環境は、普通のインテリアを入れても合わなくって。置いてあったものを再利用して、天板を載せてテーブルを作ったり、ほとんど自分たちで試行錯誤しながら生活している感じです。
Y:このマーガレット・ハウエルの食器はベーシックで品があるから、どんな場所にも馴染んで使いやすいですね。「mitosaya大多喜薬草園蒸留所」ではたくさんハーブが獲れるから、ハーブを使うお料理も楽しくって。寒くなってからは、ハーブを乾燥させて保存することにも挑戦しています。
H:今日のご飯もすごくおいしい。江口くんは、ユトレヒトをやっている時から、今のような生活をイメージしてました? それとも、師匠と出会ってから?
E:うーん、それがあんまりはっきりしていないんですね。昔から、将来的には自然相手の仕事がしたいなっていうのは思ってましたけど。でも農業ではなくて、漠然と「自然との間に自分が立ってできることは何かないかな、あるといいな」って。そんな時に、クリストフ・ケラーがお酒を作っているって知ったんです。
H:もともとアートブックを作っていた人ですよね。
E:そうそう。「Revolver」っていう出版社を創設して、アートブックを発行していたんだけど、引退してから蒸留家になって。もともとアートブックを作る人として彼のことは知っていましただけど、彼が作っているお酒と出会ったのは全然別の機会。変わったお酒が好きな僕の知人が、彼のジンを教えてくれて、その複雑な味やラベルがすごく気になって、家に帰って調べてみたらあのクリストフ・ケラーが作っていると知って、その時はすごく驚きました。
H:それは、びっくりですよね。
E:ラベルのデザインやエディション番号が入っているところもアートブックと繋がる部分があるように思えて、「アートブックを作っている人がお酒を作ったらこんな風になるんだ」って関心して。それで連絡して、ドイツに会いに行ったんです。
H:すごい行動力だよね。祐布子さんは、江口くんの中に「蒸留家になりたい」っていう想いがフツフツと湧いている時から話を聞いていたの?
Y:聞いていたんでしょうね。というのも、江口さんは突拍子もないことをたくさん考えているから。でも全部本気で思っているのがすごいよね。
H:大変じゃないの?
Y:よく言われます。でも、私は私でイラストレーターとしてやっていることがあるから、江口さんの仕事にはあまり口を出さないようにしていられるのかも。
E:でもあんまりすぐに賛成してくれるってことはないよね。だからまずは、家族を説得するために、裏付けを作るのを頑張るんです。
Y:意図的に、対岸にいるようにしているんですよ。私は江口さんのようにはできないから、っていうことでもあるんですけれど、「江口さんが考えないようなことを考えよう」って思うようにしています。
H:意見を戦わせる、っていうことではないんだね。それが家族として補完しあっているっていうことなのかな。
E:僕としては、常に「家族の幸せ最大化プロジェクト」を考えているんですけれどね。あまりにも突拍子がないから、理解まで時間がかかるよね。
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KNIT ¥29,000 SHIRT DRESS ¥49,000 TIGHTS ¥4,700 SHOES ¥51,000
*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
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KNIT ¥39,000 CUSHION COVER ¥16,000 TRAVEL SHOES ¥29,000
*掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。
H:この「mitosaya 大多喜薬草園蒸留所」の物件はどうやって探したの?
E:インターネットで、普通に検索して見つけたんですよ。もともとは千葉県が持っている薬草園だったんだけど、薬草園を閉めてしまうっていうことで、そのまま借りる人を探していたんです。こういう場所で子供が育ったら良いだろうなとか、20年後に僕と祐布子で暮らすとしたら、とか色々考えて決めました。
H:子供達は喜んでるでしょう?
Y:そうですね。子供達は、何が起こってもあんまり動じないですね。彼らにとっては「これからどうしよう」とかって不安もまだないだろうし、その時々を目一杯楽しんでくれているみたいです。
H:祐布子さんもここで仕事をしているんだよね。
Y:そうなんです。江口さんの隣に机をおいて。今はとりあえず、もともと薬草園で使われていた家具と、前の家から持ってきた家具と組み合わせて、どうにかお部屋にしています。このアングルポイズのイエローのランプもすごく気に入っています。少しくすんだカラーも、馴染みが良くて素敵で。メモも、とりあえず子供もの落書きしている紙の裏を使って……という感じだったんですけれど、このメモパットはオブジェみたいで机の上に置いておいても良い感じなんです。
E:椅子も、薬草園の理科室で使うようなスツールをそのまま使っていたりするんだけど、アーコールの椅子はやっぱり質感も良いし、軽くって使いやすいです。
H:この場所で過ごす初めての冬になるけれど、クリスマスはどうするの?
Y:どうしましょうね。子供達には、毎年何か自分の手で作ったものをプレゼントしたいなって思っているんですけれど、なかなか難しくって。でも、ケーキだけは手作りしています。
E:僕がはじめて祐布子にもらったプレゼントも、祐布子が描いてくれた絵だったな。その時、僕はカヌーをやっていたんですけれど、描いてくれたのはボートの絵。「カヌー」って書いてあったんだけど、「これはボートだよ」っていうのが当時は言えなくて、ありがたくいただきました。
Y:本当に? 恥ずかしい。私が初めて江口さんにもらったのは枕でした。
H:枕?
E:当時、使い心地の良い寝具に凝っていたんですよ。
H:なかなか無いプレゼントですね。ここは秋の紅葉やクリスマスにも映える冬景色とか四季を感じられる素敵な場所ですよね。蒸留所含めこれからどうなっていくのかとても楽しみです。また、家族を連れて遊びに来ます。
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江口宏志 蒸留家見習い
えぐち・ひろし/2002年、東京・代官山にブックショップ「UTRECHT(ユトレヒト)」をオープン。2009年からはアートブックフェア「THE TOKYO ART BOOK FAIR」を企画・開催。蒸留家クリストフ・ケラー氏との出会いをきっかけに、
2015年南ドイツに渡り、オー・ド・ヴィの蒸留所「Stählemühle(スティーレミューレ)」で修行をする。現在は、「mitosaya大多喜薬草園蒸留所」の2018年春の開設に向けて準備を進める。
山本祐布子 イラストレーター
やまもと・ゆうこ/イラストレーター。切り絵作品、ドローイング作品を中心に、雑誌、装丁はもちろん広告・エディトリアル・プロダクトと、ジャンルを超えた活動を行う。ブログやインスタグラムでは、2人の娘たちの姿や、日々の小さな出来事等を綴っている。江口さんの蒸留家修行を見守るため、2015年には子供2人を連れて家族でドイツに滞在した。
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平野太呂 写真家
Taro Hirano / Photographer
1973年生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。2000年よりフリーランスとして活動を開始。スケートボードカルチャーを基盤にしながらも、 カルチャー誌やファッション誌や広告などで活動中。主な著書に『POOL』(リトルモア)『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)『東京の仕事場』(マガジンハウス)、フォトエッセイ『ボクと先輩』(晶文社)、『Los Angeles Car Club』(私家版)、『The Kings』(ELVIS PRESS)がある。東京都渋谷区上原にて2004年からNO.12 GALLERYを主宰している。