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    Shigeki Fujishiro 藤城成貴 / プロダクトデザイナー 写真家・平野太呂さんの感性とシンクロするさまざまなクリエイターに密着する連載コラム「LIFE NOTES」。第二回目は、平野さんとは20 年来の仲だというプロダクトデザイナーの藤城成貴さんが登場します。

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    SHIRT ¥19,000 TROUSERS ¥26,000 SHOES ¥13,000

    *掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。

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    SAITO WOOD BUCKET L ¥7,800

    *掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。

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    平野太呂(以下H):お久しぶりです。よく一緒に撮影はするけど、取材するのは初めてかも。
    藤城成貴(以下F):そうですね。僕ら長い付き合いですけどね。
    H:知り合ってもう20年ぐらい経ちますが、改めてどういうきっかけで今の道に?
    F:元々、大学で経済を学んでいたんですけど、1年間アメリカのバークレーに留学していた時に、向こうの街並みを見て「こんな建物を作る仕事をしたい」って思い、日本に戻って大学に行きながら桑沢デザイン夜間部で空間の勉強をしました。それと同じ時期に、IDÉEのカフェでバイトを始めたんです。
    H:そうなんですね。内装や建築方面を目指していたとは知らなかった。成貴の作品で最初に世に出たのも確かIDÉEでしたよね?
    F:そう、正確にはIDÉEの中のスプートニクというラインから出したんです。スニーカーみたいな形をした椅子で「スヌーク」っていう作品。
    H:なんか暴走族のバイクのシートみたいな形してたような・・・。
    F:そうそう、まさにレカロシートっていうのかな?あれを見ながら考えたんですよ。職人さんに嫌がられて大変でした。ちょうど2000年だったと思う。
    H:その時はまだカフェで働いてました?
    F:いや、IDÉEの倉庫に異動になって配送してた頃かな。
    H:カフェから倉庫?配送の運転しながら商品を開発?面白いですね。そういえば成貴は、昔から服が好きだったと思いますが、今日着ているマーガレット・ハウエルの服はいつも着ている感じとあまり変わらず、違和感ないですね。
    F:シンプルなデザインが好きなので、マーガレット・ハウエルの服は相性がいいかもですね。自分のワードローブの中に自然と溶け込んでいく印象です。
    H:シャツは良く着るんですか?
    F:普段からこういう格好が多いかも。特に最近は、大学で教えたりしているからちゃんとした格好もしようかと思って。
    H:え?大学で非常勤講師ってこと?どこで?
    F:多摩美で週1回のペースで教えています。生徒さんの前ですし、襟のあるシャツを着た方がいいかなって思って、着るようにしています。マーガレット・ハウエルの他のシャツも持ってますよ。
    H:マーガレット・ハウエルはどこのお店で見たりするんですか?
    F:神南のお店かな。入って右側の小物が置いてある棚のインパクトがすごくて、印象に残っています。僕がディレクションしているSAITO WOODのゴミ箱が置いてあるっていうのもありましたけど、そういうプロダクトと洋服が一緒に並んでいるバランス感がすごく好きなんですよ。小物の白とグレー、時折差し色で入るカラーの配色とかが、空間としても絶妙だなって。
    H:今でこそライフスタイルブランドって増えましたけど、その先駆け的なところありますよね。
    F:そうですね。その当時はもう少しタイトな服装でしたけど、年相応になり、マーガレット・ハウエルの服が似合うようになってきたので、これからもっと着ていきたいなって思ってます。

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    H:マーガレット・ハウエルでも展開があるSAITO WOODのディレクターはいつから?
    F:もう10年ぐらい前からです。プロダクトを通して繋がっているっていうのも不思議な縁ですね。
    H:SAITO WOODのカタログを一緒に作らせてもらった時は、静岡の会社まで行ってイメージ写真の他に、キリヌキのカタログ写真も撮影しましたね。オークとかチークとかの素材違いにサイズ違い、同じデザインのゴミ箱を永遠撮らされて・・・。
    F:太呂君、物撮りもやるんだっけ?って聞いたらやるよって言ってくれたからさ。
    H:あの時、途中寝てたでしょ?はい、じゃあ次のちょうだい、って言ったら持ったまま寝てて。
    F:相当の数ありましたからね。夜中12時過ぎまで撮影してたし。朝行って次の日の朝帰ってきた感じでしたね、いい思い出です。
    H:そもそもなんでSAITO WOODのディレクターになったんですか?
    F:ゴミ箱の模型を作っていたときに、それを見た僕の元上司が、SAITO WOODを紹介してくれたんです。でもそれを先方に見せたら、これはできませんって言われて。できない理由がわからないから見させてほしいと、お願いをして工場へ行ったのが始まりです。結果、僕が作ろうとしていたゴミ箱は、コスト的にも時間的にも無理だなってことを理解し、断念したんですけどね。そこから繋がって、ディレクターをさせて頂くことになったんです。
    H:そのゴミ箱のようにプロダクトを作る時はまず、模型で試作するわけですね?
    F:はい、5分の1サイズでミニチュアを作るのが基本で。実際に空間自体も5分の1のスケールで表現して、そこに椅子を置いてこういう見え方になりますってプレゼンをしたりしています。
    H:ドールハウスっぽい感覚。昔からミニチュア好きでしたよね?テントのミニチュアとか。家に遊びにいったときに沢山あった記憶が。
    F:自分でテントの模型も作ったりしましたよ。
    H:商品化は?
    F:何回もプレゼンしたんだけど実現せず。ゴアテックスで作ろうとして、生地まで作ったんですけどね。でも結局縫う工程で、本体が大きすぎてシームの機械に入らないことがわかって諦めざるをえなかったんです。
    H:ゴアにこだわった結果ですね。あのテントのミニチュアいいですよね。
    F:昔のアメリカのテントの販売方法って、こういうミニチュアをお店の中に置いて販売していたんですよ。そのミニチュアが1年に1回ぐらいeBayのオークションで出品されるので、こまめにチェックしてコレクションしてました。一時期テントデザイナーにもちょっと憧れがあって。ギアはいいものあるけど、理想のテントがなかなかないから、じゃあ作ろうって思ってたんです。
    H:今そのテント熱は?
    F:だいぶ薄れましたね・・・。でもどこかのメーカーからそういうチャンスをもらえるなら是非やりたいです。

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    SHIRT ¥24,000   TROUSERS ¥28,000   SHOES ¥13,000

    *掲載している商品の価格は、すべて本体のみ(税抜)です。

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    H:マーガレット・ハウエルでは、アーコールとかアングルポイズなどのイギリスのプロダクトを扱っていますけど、イギリスのプロダクトで気になるものってあります?
    F:イギリスというかヨーロッパのものですけど、今回ユトレヒトでやった「ゲーム展」の元ネタになった玩具があって、紙箱で作られた手のひらサイズのゲームを収集してるんですよ。主にイギリスやフランスのものが中心で。穴に小さい球を入れていくようなゲームとか、単純だけど意外に難しいんですよ。パッケージも魅力的です。
    H:確かにデザインがいいですね。少しイライラするけど、中毒性はあるかも。集めはじめたきっかけは?
    F:空間と奥行きのあるデザインがすごくカッコよくて。小さい箱の中に建築的な立体物が入っているっていうのにも惹かれたんです。こういうのをうまく自分なりに表現できないかな、っていうのがゲーム展の基になった部分でもあるんです。仕事でデザインする日用品のようなものをユトレヒトで展示するというイメージがあんまり湧かず、でも手で使うものにはこだわりたかった。それで、このゲームというアイデアに。玉が色んな素材の上を転がっていって、その振動で手に素材感が伝わるようなものにしたかったんですよ。本屋というロケーションも意識しました。
    H:全部同じサイズの箱で作ったんですね?
    F:そう、A4サイズの木箱をベースに球を落とすゲームを制作しました。
    H:けっこう作るのに時間かかったんじゃないですか?
    F:はい。まず考えるのに時間かかります。4月の中旬から作り始めて1日1個ペースで作らないと間に合わないっていう計算になってきて焦りました。朝考えて、材料買いに行って作る。そんな感じの生活が続きました。
    H:これ購入した方は飾るのかな?
    F:ゲームをしなくても飾っておけるのがポイントです。
    H:フレームに収まっているからアートっぽいですね。配色とか中の素材感も面白いし。まだここにあるってことは、これから発送ですか?
    F:実はこのゲームの作品を本にまとめようと思っていて、その撮影が終わってから発送します。
    H:なるほど。じゃあ、電車の中で撮影しません?みんながスマホでゲームをやっている横に並んで箱持って。最初の見開きは全員スマホで、次の見開きページを開くと、同じ構図で全員この作品を持って並んでるっていうのもいいね。どう?
    F:面白そうですけど、そういう本じゃないんですよ・・・。
    H:撮影の際はまた、お声掛けください。

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    PROFILE 藤城成貴/プロダクトデザイナー

    1974年東京生まれ。和光大学経済学部卒業後、桑沢デザイン研究所夜間部を卒業。
    1998年よりイデーに入社。定番商品、および特注家具をデザインする。
    2005年に退社し、shigeki fujishiro designとして個人でデザイン活動を開始。
    SAITO WOOD、IDÉE、RS Barcelona、Hermes petit h、
    HAY、adidas、2016/arita、dosa など、
    国内外さまざまなブランドから作品を発表している。

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    PROFILE 平野太呂/写真家

    1973年生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。2000年よりフリーランスとして活動を開始。
    スケートボードカルチャーを基盤にしながらも、
    カルチャー誌やファッション誌や広告などで活動中。
    主な著書に『POOL』(リトルモア)『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)
    『東京の仕事場』(マガジンハウス)、フォトエッセイ『ボクと先輩』(晶文社)、
    『Los Angeles Car Club』(私家版)、『The Kings』(ELVIS PRESS)がある。
    東京都渋谷区上原にて2004年からNO.12 GALLERYを主宰している。