「デザインはいつも、自分が欲しいと思うものから生まれます。その中に一貫性があるのは、それがパーソナルなものだからです」
― マーガレット・ハウエル

The Gentlewoman 編集長のペニー・マーティンが、ジャンブルセールで見つけたささやかな掘り出し物が、時を経ていまもなお放ち続ける影響についてマーガレットの言葉と共に綴る。

時は1969年、とてもシックなゴールドスミス・カレッジの美大生が自身の卒業制作展の前でカメラに向かってポーズを取っている。黒のポロネックワンピースに、しっかりと墨黒のアイライン、そして鋭いラインのピクシーカットの彼女…ここまではミニマルでモッズ風、しかし一つだけ違うのは、首元から長く流れるシフォンだった。クラヴァットのようでもキッパータイのようでもあり、ポルカドットとそれを取り巻くボーダーのパターンが施され、全く別世界-おそらく当時のお洒落な紳士たちのものだ。だがここではまったく異なる働きをしている。目を惹きつけると同時に、グラフィックの精緻さで強い印象を放つ。この写真の女性こそマーガレット・ハウエル。かつてジャンブルセールで手に入れ、ロンドン中心部のアーカイブに収められているこのドットスカーフこそが、その後の年月を貫く一本の糸の始まりであり、彼女にとって今も特別な意味を持ち続けている。

「ジャンブルセールで見つけて、その見た目やドットの大きさ、巻いたときの落ち感に惹かれました。シンプルですが、ずっと大切にしてきました」

この象徴的なドットスカーフの影響が最初に現れるのは、1970年にマーガレット・ハエウルが製作を始めたウィメンズシャツの2点のスケッチだった。この年、彼女はファインアートから服飾デザインへ転じ、事業を立ち上げる。英国の老舗機屋から生地を仕入れ、ピンストライプやチェックといったクラシックなメンズのシャツ地を使って、モダンで女性的な表現を目指した。それはパフスリーブやスピアポイントカラー、ゆったりとしたシルエットのドットのブラウスを見ればわかる。でも当時は、これらを売るのは容易ではなかった。

その代わりに成功をおさめたのは、オーバーサイズでジャーミン・ストリートのビスポークレベルのクオリティを持ちながら、彼女のウィメンズシャツに通じるソフトな仕立てでカジュアルなフィットのメンズシャツだった。このメンズウエアとウィメンズの装い、テーラリングとワークウエアというさりげないコントラストの付け方が、1977年ジョセフ・エッテギをパートナーにロンドン、メイフェアのサウス・モルトン・ストリートにオープンした彼女のショップで発表されたメンズコレクションの基礎となった。このメソッドは、現在もなお彼女の中で進化を続けている。

「控えめでカジュアル、けれどその機能を果たす服。きちんと考え抜かれ、さりげないディテールが効いていたから、人々は共感してくれたのでしょう。人は何もかもよく見ているものですね」

そんなマーガレット・ハウエルのシャツは、それがシルク素材となると、なおさら彼女のしっかりとしたツイードやスーツ地に、柔らかく生き生きとした表情を与える。その効果がもっともはっきりと表れたのが、1970年代初頭に作り始めたドットスカーフのシリーズだった。起源をたどれば、1969年のあのクラヴァット風スカーフへ行きつき、以来ずっとスタイリングにキャラクターを添える存在となっている。そして早くも1974年の時点でファッションエディターたちが彼女のスカーフを撮影に使い出し、同年冬の『イブニング・スタンダード』の切り抜きには、得てするとマニッシュになりすぎるコーディネイトに流れ落ちるシンプルなポルカドットが効果的に使われ、若々しいエネルギーを与えている様子が写し出されている。

「10代のころの、母と一緒に布地を買ったときのワクワクした気持ちを覚えています。今でも生地の展示会を隈なく見て歩くのが好きです。何が見つかるかわからないですからね。いつでもときめかせるものを探しているし、何に心が動くかもその都度変わるものです」

マーガレット・ハウエル自身が「スポティッド・シルク・クラヴァット」と呼ぶ、当時12.50ポンドの最初のドットスカーフが発売されたのは1981年の夏、彼女が初めてウィメンズコレクションを発表した年でもあった。それからドットスカーフは、コットンやリネンをはじめ、ロマンティックなムードのシーズンではデヴォレ加工のベルベットも用いられ、実に幅広くありとあらゆる素材で、その度にドットのサイズや配置を変化させながら展開されてきた。1993年にはオーバーサイズのドットが登場したかと思うと、その翌年には針で突いたようなベージュのピンドットがダークブラウンのシルクシフォンにあしらわれた。一連のドットスカーフは、コレクションに色彩や動き、感情を吹き込む終わりのない試みであり、ドットを数ミリだけ離したり、ボーダーを足したりするだけでも、新しいウエアを発表するのと同じくらいの喜びをデザイナーにもたらしてきた。

「たったひとつのドットをほんの少し動かすだけで、全体がまったく違って見える―特にシルクでは。間隔やリズムの取り方はとても繊細です。私にとってデザインとは、まさにその微妙な調整に宿るものなのです」

ドットスカーフの55年にわたる進化を記念して、マーガレット・ハウエルは2025年秋冬コレクションに新たな2バージョンを発表。もう10年の付き合いになる、イタリアの由緒あるマンテロ社によるスクリーンプリントで仕上げられた50センチ四方のスカーフは、エッジが手作業でかがってあり、ブランドを象徴するマーガレットの手書きロゴがあしらわれている。ひとつはドットで、もう一方はコンセントリックボーダー。双方でマーガレット・ハウエルのスカーフの1969年に遡るインスピレーション、その根底にある彼女のパーソナルなスタイルと、デザイナーとしての確固としたこだわりを辿ることができる。

スカーフの復刻を記念して、昔のマーガレットの写真やキャンペーンイメージ、当時のドローイング、アーカイヴスカーフをUKから取り寄せ、特別な展示を店舗限定で行います。

MARGARET HOWELL 神南
10月9日(木)―24日(金)

MARGARET HOWELL SHOP & CAFE グラングリーン 大阪
10月10日(金)―21日(火)

MARGARET HOWELL SHOP & CAFE 天神
10月11日(土)―22日(水)

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