アバット・トイズ
『適切な年齢に適切なおもちゃを』

ポール&マージョリー・アバット
英国モダントイのパイオニア

2021年カレンダーエキシビションの様子
ロンドン、ウィグモアストリート店にて

1932年、アバット夫妻は子どもたちの遊び方に関する研究に基づいた玩具と遊具を生産販売する会社を立ち上げました。シンプルでカラフル、しっかりとした作りの彼らのモダンなプロダクトは多くの世代の子どもたちの成長の支えとなりました。

「孫ができて幼い子どもたちが遊ぶのをそばで見られるようになってすぐに、子どもたちがすっかり夢中になって喜ぶのは何かを作ったり組み立てている時だということが分かりました。子どもの遊びに対する考え方を変えたパイオニア世代にポールとマージョレー・アバットがいます。彼らがデザインしたおもちゃは想像力だけではなく運動能力も向上させます。子どもたちは人の力を借りずに楽しみながら学習できるのです!」 − MARGARET HOWELL

ABBATT TOYS
THE RIGHT TOY FOR THE RIGHT AGE
2021年カレンダー
¥2,000

1年かけてヨーロッパを巡った後、1931年にポールとマージョリー・アバットは持ち帰った知育玩具を展示し、ウイーン、プラハ、そしてベルリンのわくわくするような新しい幼児教育スタイルを発表しました。これがきっかけとなって、おもちゃの製造と販売を手掛ける会社を立ち上げたのです。その多くは木製で、教師や保護者へのアドバイス、「適切な年齢に適切なおもちゃを」がスローガンでした。
会社を設立してすぐに、ふたりはパリからロンドンに移住したエルノ・ゴールドフィンガーと友人になります。彼はブルームズベリーの夫妻の住居と工房、1936年にはウィンポール・ストリート94番地のショールームの内装デザインを手掛けました。そして、おもちゃや子ども専用家具のデザイン、展覧会の設置に携わりました。フリーダ・スキナー、マデリン・ロビンソンといった他のアーティストやデザイナーもジグソーパズルや絵入りのトレイを考案しています。

その後同業者が増えていく一方で、アバット夫妻はこれをひとつのムーブメントとしてまとめます。1950年代にはこの分野の研究と国際協力を目的とした慈善団体『チルドレンズ・プレイ・アクティビティーズ』を立ち上げました。
アバット・トイズは1930年代モダニズムの流れを汲んだビジュアルですが、時代を超越して子供たちが本当に必要としているものも把握しています。ポール・アバットはこう書き残しています。『おもちゃというものは子どもの成長に立ちはだかる問題の解決の手助けになります。言葉とは違い形があって、まだ語彙の少ない子どもでも扱いに困らない自然な表現手段です。…こういったおもちゃのおかげで、われわれ大人も言葉で子どもを非難したり苛立ったりしないで済むようになります。というのも、良いおもちゃを与えられた子どもは遊びに満足することで平静になり、そんな子どもにわれわれも満足するようになるからです』
アバット夫妻は子ども部屋の床で遊ぶおもちゃだけではなく、今では庭で見かけることも多くなったジャングルジムやすべり台、移動可能な砂場なども発売しました。室内用に取り入れられたのは、ちゃんとした作業台でリアルな道具を使って行う木工やその他の家庭的な作業です。時代とともに他の国内メーカーや輸入品による商品展開の変化はあったものの、現在でもアバット・トイズの核となっているのは1934年から1980年にかけてカタログに収められた製品です。

アラン・パワーズがポールとマージョリー・アバットの出発点からヨーロッパ大陸で受けた影響、そしてエルノ・ゴールドフィンガーとの親交を辿る1冊。一部店舗及びオンラインストアで購入できます。

*オンラインストアでは完売しました。