A collection reflecting the skill and craftsmanship of weavers, dye-houses and shirtmakers. 織り手、縫い手、染め手、職人たちの技術とクラフトマンシップを映し出すコレクション。

AW25シーズン、MHL.ではアーカイブのデザインを基に、今の時代にあわせてアップデートしたシャツのカプセルコレクションを展開する。一枚のシャツをきっかけにブランドをスタートさせたマーガレット・ハウエルにとって、シャツとはブランドのものづくりへの姿勢を色濃く反映する、アイコニックなアイテムだ。

このコラムでは、MHL.のシャツを製作する工場へと足を運び、「SEWING(縫製)」と「DYEING(染色)」という生産工程にフォーカス。そこから見えてきたのは、私たちのものづくりを支える職人のクラフトマンシップと、信頼のおけるファクトリーの存在だった。

SEWING

つくりの良いシャツはその縫製に現れる。運針といわれる糸目の細かさ、それぞれのパーツを組み合わせた際の美しい柄合わせなど、そのひとつひとつが積み重なり、一枚のシャツが形づくられる。
福島県いわき市にあるシャツを専門に手がける縫製工場。
ここでは裁断や縫製、パーツづくり、ボタンの取り付けといった工程を分業制で行い、60人以上の熟練の職人たちがそれぞれの持ち場で腕を振るっている。

「シャツ生地にはないような厚手素材の取り扱いは、課題をクリアするような気持で常に臨んでいます。脇のスリットやマチの仕上げ、アームホールのダブルステッチを均等に縫製する工程は、縫い直しが効かないため特に集中力と技術力が求められます」

ワークウエアやミリタリーウエアをインスピレーション源とするMHL.では、長年の着用にも耐えるタフな素材や、機能的で身体の動きを計算したディテールをデザインに取り入れている。そのフィロソフィーを体現する部分の縫製は一筋縄ではいかない。

縫製は表には目立たない細部にまで気を配って行われる。たとえば負荷のかかりやすいボタンには、「力布」と呼ばれる生地を裏から足して耐久性を高め、ボタンの足元に糸を巻き付ける「根巻き」も加える。丈夫さだけでなく、着脱もしやすくなる実用的な工夫が日常の使いやすさへつながっている。

工場では、職人自身が納得のいくものを世に送り出すということを信念に、日々その技術を磨いているという。手間をいとわない丁寧な手作業と、ものづくりに向き合う真摯な姿勢によって生み出されるシャツは、長く愛される一枚となって着る人の手元に届く。

DYEING

MHL.を語るうえで欠かせない製法のひとつがガーメントダイ(製品染め)だ。元から染められた糸で作られる製品とは異なり、ガーメントダイの経年変化は、長年愛用したワークウエアのような豊かな表情となって着る人の個性が刻まれていく。

シャツの染色を手がけるのは、東京で100年以上にわたり衣服染色を専門とする老舗の工場。機械から立ち上る高温の蒸気に包まれる中、職人がシャツの入った釜に染料を投入していく。釜の中で絡まりやすい袖などを糸で縫い留める「留付け」を施し、ムラ無く均一に染め上げていく丁寧な作業も重要な工程のひとつだ。

数ある工程の中でも特に高度な技術を必要とするのが「色合わせ」。素材の風合いにこだわるMHL.にとって、カラーリングの微妙なニュアンスはそのシーズンのフィーリングを映し出す重要な要素になる。そのため工場では、染色試験を繰り返し行い、オーダー通りの色を出せるように細かな調整を重ねていく。

「サンプルや量産に向けた試験など、その時々で気温や湿度などの条件が異なるため、同じ配合で染めても染上がりにはどうしてもブレが生じる。それをいかに少なくして狙いの色に仕上げられるかが職人としての腕前、技術力にかかってきます。調整する染料の量の見極めは非常に繊細で、その判断能力は一朝一夕に養われるものではありません」と担当者は語る。

この工場では、「あたりまえのことをあたりまえにやっていく」という姿勢を土台に、さらなる付加価値の創出に向けてアップデートを続けている。その姿は常につくりの良さや新しい素材を追求するMHL.の姿勢とも重なる。長年積み重ねられてきた経験と技術がMHL.の「色」とこれからのものづくりを支えていく。

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